NEW音の反響を伴う突発性難聴
症状
約1ヶ月前に突然発症した「低音型突発性難聴」である。初めは右耳に違和感を感じ、その後左耳に異変を感じるようになった。主な症状は音の反響と左耳の低音域における聴力低下である。自分の声やテレビの音が響き、ワンワンと反響する状態が続いていた。医療機関にてステロイドの点滴治療を受けたが、十分な改善は得られなかった。また、頭痛や首コリ、肩こりなどの随伴症状も見られ、症状が気になり仕事に支障をきたしている状態であった。
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来院者
女性
50 代
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期間
2020年5月 ~ 2020年12月
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頻度
週2~3回
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通院回数
21回以上
施術と経過
初診時、肩上部の僧帽筋に著明な緊張が認められた。最初は背部のツボを用いて、肩背部および頸部の緊張緩和を目的とした施術を行った。初回施術後、体の軽さは感じられたものの耳の症状に変化はなく、時に響きが強くなることもあった。その後、治療方針を変更し、臀部と肩甲骨内縁のツボを主体とした施術に切り替えた。施術を重ねるにつれ、低音の耳鳴りが減少し、代わりに高音の耳鳴りが出現。また、目覚めの改善も見られるようになった。特に臀部のツボを用い始めてからは、改善のペースが加速した。全46回の施術を要した。
データ
使用したツボ
まとめ
本症例は「低音型突発性難聴」に対して、段階的なアプローチで改善を図った例である。当初は肩背部や頸部への施術を中心に行ったが、十分な効果が得られなかった。その後、臀部と肩甲骨内縁のツボを主体とした施術に変更したところ、耳鳴りの性質が変化し、目覚めの改善も見られるようになった。特に臀部のツボを用いた施術が転機となり、改善のペースが上がったことが示唆された。本症例から、突発性難聴に対する鍼施術においては、症状の変化に応じて施術部位を適切に選択することの重要性が示された。また、耳鳴りの性質の変化は改善過程における一つの指標となる可能性が考えられる。