NEW二重の耳鳴りと頚こりを伴う突発性難聴
症状
1ヶ月前から右耳に詰まり感が出現し、その後めまいを伴うようになった患者である。耳鼻科にて「突発性難聴」の診断を受け、ステロイド治療を開始している。症状は右耳の聞こえにくさを主訴とし、「ピー」「ジー」という二重の耳鳴りを伴っていた。また、もともとあった頚部、肩部の凝りが増強しており、特に頚部に強い緊張が認められた。耳の症状は朝方にやや軽減傾向があるものの、日常生活全般に支障をきたしている状態であった。
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来院者
女性
40 代
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期間
2020年3月 ~ 2020年6月
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頻度
週2~3回
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通院回数
21回以上
施術と経過
初回は頚部の緊張緩和を目的として、脊柱近傍のツボと臀部に施術を行った。その後、右膝外側部や肋骨上部の緊張部位への施術を追加したところ、変化が現れ始めた。施術を3回実施した時点で、既存の高音の耳鳴りに加えて低い「ボー」という音が断続的に出現するようになった。6回目以降、耳鳴りの音量が減少し始め、9回目終了時点での聴力検査で改善が確認された。聴力の回復は6回目までに得られたが、その後も残存する耳鳴りに対して施術を継続し、段階的な改善が得られた。施術期間中に出現する肩こりに対しては、その都度対応して軽減を図った。
データ
使用したツボ
まとめ
本症例は「突発性難聴」に対して鍼施術を行い、聴力の改善と耳鳴りの軽減が得られた例である。聴力の回復は比較的早期に得られたものの、耳鳴りやつまり感の完全な消失までには時間を要した。頚部から肩部の緊張と耳症状との関連性が示唆され、局所だけでなく全身的なアプローチが有効であった。特に、下肢や体幹部への施術を追加したことで症状の改善が促進された点は、治療戦略を考える上で示唆に富む結果となった。今後も同様の症例に対しては、耳周囲への直接的なアプローチに加えて、全身の緊張状態にも注目した治療方針が有効である可能性が示された。