NEW耳鳴りによる不安感とうつ症状
症状
20代男性が、約1年前から続く耳鳴りと、5〜6月頃から自覚するようになった聴覚の異常を主訴として来院した。静かな環境下で高音の耳鳴りが顕著に現れ、特に夜間の就寝前に症状が強まるため、睡眠の質が低下し眠りが浅い状態が続いていた。また、自分の声が耳から入りにくい感覚があり、反対側の耳にも聞こえにくさを感じるようになっていた。医療機関を受診したものの原因は特定されず、聴力検査の結果も場所やタイミングによって変動し、悪い時でも正常範囲内に収まっていた。5月には元々抱えていたうつ病の影響もあり仕事を休職しており、今後耳が聞こえなくなるのではないかという強い不安感を抱えていた。初診時の触診では、肩上部と肩甲間部に強い緊張が認められ、頸部の可動域制限も確認された。
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来院者
男性
20 代
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期間
2025年8月 ~ 2025年11月
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頻度
週2~3回
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通院回数
11回~15回
施術と経過
初診時、肩甲間部の緊張緩和と呼吸機能の改善を目的とした施術方針を立てた。具体的には、肩甲間部の緊張を取るために足と手のツボに鍼をし、首肩の頑固な凝りに対しては頭部のツボを用いた。初回施術後、身体が楽になった感覚は得られたものの、耳鳴りの改善は見られなかった。2回目以降も同様の方針で施術を継続したところ、3回目の来院時には閉塞感の軽減が認められた。5回目には耳鳴りが気にならない日が出現し始め、8回目には耳鳴りの影響でほとんど聞けていなかった音楽を楽しめるようになった。10回目頃には耳鳴りがほとんど気にならなくなり、日常生活に支障がない状態まで回復した。また、7回目頃には付き添いで来院していた母親から、うつ病発症前よりも家での会話が増え、元気になったとの報告を受けた。15回目の施術時には、2週間間隔でも体調が良好に保たれることが確認されたため、その後は月1回程度のケアに移行した。
使用したツボ
まとめ
耳鳴りと聴覚異常を主訴とする症例に対し、肩甲間部の緊張緩和と呼吸機能改善を目的とした鍼施術を行った。足と手のツボ、および頭部のツボを用いた施術を継続することで、段階的な症状の改善が得られた。特に3回目以降から閉塞感の軽減が始まり、10回目頃には耳鳴りがほとんど気にならない状態まで改善した。また、うつ症状についても改善傾向が見られ、家族からも前向きな変化が報告された。15回の施術を経て日常生活に支障のないレベルまで回復し、その後は月1回程度のメンテナンスに移行した。肩甲間部の緊張と呼吸機能が耳鳴りや聴覚症状に関連していた可能性が示唆され、全身状態の改善が精神面にも良い影響を与えた症例である。



























