右手薬指と小指のフォーカル・ディストニア
症状
プロのギター奏者。6年程前に右手薬指、次いで小指がまるで筋肉がつったかのように曲がったまま伸ばせなくなった。手外科専門医を受診し「フォーカル・ディストニア」と告げられた。曲がった薬指と小指は力で伸ばせなくはないが代償として中指がピンと伸びてしまうので、ギター演奏は極めて難しい。また日常的にも薬指と小指が屈曲したままの状態が続いている。痛みはない。他に顎を噛みしめる傾向がある。
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来院者
男性
60 代
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期間
2020年2月 ~ 2020年4月
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頻度
週1回程度
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通院回数
6回
施術と経過
1回目 ギターの演奏を見せてもらうと、右薬指と小指でいわゆる巻き込みが起こっていて、中指はその代償としてずっと伸展していた。触れて確認すると胸椎の右側が硬い。そのほか肩や肘、膝などを触れると腱が硬く張っていて筋緊張の高さがうかがわれた。症状の出ている指の連動を考えて脊椎と手のツボに鍼をした。施術後に再度ギターを弾いてもらうと、巻き込みは起こっていたが感覚的には「指が開きやすくなった」とのコメントを得た。
2回目 施術前に「前回の翌日から指がよりなめらかに動くようになり劇的に変わった」とのフィードバックを得る。そこで以後5回目まで1回目と同様の施術を繰り返す。
5回目 巻き込みは残っているが伸ばした状態を維持するのが容易になってきた。「以前は指のために練習にならなかったが十分な時間練習できるようになった」「体の中の方が変わってきた感覚がある」とのコメントを得て、これ以降は間隔をあけることとした。
6回目(5回目の1か月後) 肩や肘、膝などを触れても以前より緊張がゆるやかになっていた。前回同様の施術を繰り返したが、背中のツボに鍼をした際「体の中の方で引っ張り合っているものが止むような感じがして指が静かになる時があった」との感想を得た。間隔をあけてもコンディションが維持できていたので、以後同じ間隔で経過をみることとした。
使用したツボ
まとめ
フォーカル・ディストニアは脳の機能の問題と考えられている。しかし脳は体から完全に独立した形で機能しているわけではない。したがって問題の比重が脳と体のどちらにあるか、この疾患の中にもフェーズないし種類があるように思う。体からのアプローチである鍼灸施術でこの疾患の症状が改善することがあったり、なかったりすることからそのように考えている。本例は体からのアプローチで一定の成果をあげることができた一例。