突然めまいに襲われたあと、音が聞きにくくなっていた
症状
来院15日前 朝、仕事をしていたら、突然めまいに襲われ、平衡感覚がなくなった.2〜3カ月に一度起こることなので、最初は気にとめなかった。仕事を終え、周りが静かになったら、左の耳で、人の声と自分の声が聞きにくかった。左の耳が人の声、自分の声が聞こえにくい。翌日も異変が続いていたため、耳鼻科へ行き検査を受けたが、「異常なし」と言われた。
来院11日前 症状が治まらず不安なので、他の耳鼻科を受診。検査で聴力異常を確認。突発性難聴と診断され、ステロイドの点滴を行った。
来院8日前 再び聴力検査を行うと、3日前よりも聴力が落ちていたため、市民病院を紹介された。
来院7日前 市民病院では入院はせず、内服薬を処方され通院となった。しかし、ドクターの態度が冷たいと感じ、放っておかれているような気分になり、不安も強くなった。
来院3日前 市民病院の受診をキャンセルし、元の耳鼻科を再び受診。ステロイド鼓室内注入療法を行ったが改善せず。
来院前日 他に何かやれることを探し、独断でペインクリニックへ。星状神経節ブロックを行い、数日続けるよう指示される。同時に高圧酸素カプセルを勧められた。
来院当日 ペインクリニックで星状神経節ブロックを受けた帰りに、耳鼻科を受診し、星状神経節ブロックを受けたことを報告すると、ステロイド療法は中断となった。その足で当院に来院。その時点で、左耳はほとんどが聞き取れず、不快感が強い。耳鳴りもあり、ボー」、「ザー」、「キー」、「シュー」、「ジー」といろいろな音がする。
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来院者
女性
50 代
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期間
2016年7月
施術と経過
耳と顎は密接に関係している。以前から顎の調子が悪かったと本人に自覚があった。顎を触診すると、顎の動きに関わる部分に緊張を見つけた。その緊張を取るために手と足にあるツボに鍼をした。翌日、「ザ、ザ、ザー」という低音の脈のような耳鳴りが混ざったが不快感がない。聴力が落ちてから、雨の音やシャワーの音が不快に聞こえていたが、心地よく聞こえるようになった。
3回目の治療で顎の調子が良くなったのを実感し、聴力検査をしたところ、中低音を聞きとる能力が上がっていた。 6回目の治療でも改善を感じた。携帯電話の音が変に聞こえるが、聞こえるようになった。体調の良し悪しで聞こえ方に波はあるものの、日が経つ事に聞こえが改善しているこを実感。耳鳴りの高い「ジー」という音は気になる。 11回目の治療で、耳鳴りが残っているものの、左耳の聴力が日常生活に支障が出ないまでに回復した。それと同時に、問題のないはずの右耳の方から、足音のような音が聞こえ始め、不安を感じたが、数回の治療で消えた。
聴力検査でほぼ正常な数値が出て、耳鳴りもほとんど気にならなくなったため、16回目の施術を最後に治療を終了した。
まとめ
耳に異変を感じてから、急激に聴力が落ちたケースである。来院当初は、耳が聞こえなくなっていくことに、強い不安を感じていた様子がわかった。問診の際には、それまでの経過に耳を傾け、不安を取り除くことに専念した。症状についての見解を述べた後、治療方針を伝えた。ご本人は他の治療との併用を強く望んでいたが、必ずしも併用がベストではないと告げた。最終的にはご本人の判断で当院での鍼灸に専念することとなった。この症例では、患者さんの不安や迷いに対してどのように対応するかが課題であった。幸い、施術開始直後から著効が見えたため、鍼灸への期待が高まった。そこから順調に回復していった例である。