逆子になったとき、お家で気をつけてほしいこと
鍼灸師であり二児の母である佐藤章代が、逆子を診ていて思うことや、妊婦さんやご家族の方に知っておいてほしいことをまとめてみました。
目次
1.逆子は病気ではありません
2.なぜ逆子だと帝王切開になってしまうのか?
3.なぜ逆子になってしまうのか?
4.帝王切開回避のために鍼灸師がお手伝いできること
5.逆子と診断されたらママがやってはいけないこと
6.逆子にならないためにママができること
1.逆子は病気ではありません
逆子になると、赤ちゃんが苦しくなってしまうのではないか、発育に問題が生じるのではないかと心配される方がいらっしゃいますが心配ありません。
2.なぜ逆子になってしまうのか?
なぜ赤ちゃんは逆子になってしまうのでしょうか。鍼灸師の視点から赤ちゃんが逆子になってしまうメカニズムを分析してみたいと思います。
①赤ちゃんの勘違い説
赤ちゃんは羊水にプカプカ浮かんでいるので上下はあまり重要ではないのかもしれません。もしかしたら、重要なのは体温です。赤ちゃんは本能的に自分の頭を温かい方に置きたがっているのかもしれません。
東洋医学には「頭寒足熱」という言葉があります。頭の方が涼しく足の方が温かい状態が健康的という意味です。
ママの頭の方が涼しくて足の方が温かい状態が理想です。お腹で考えると臍より上が涼しくて、臍より下が温かい状態です。
赤ちゃんは温かい方に頭を置きたがると考えると、頭は下になります。しかし、頭寒足熱が崩れると、赤ちゃんも頭が下という定位置を崩してしまいます。
頭寒足熱が崩れる原因の一つとして考えられるのは、肩や首のコリです。肩や首が凝っていると頭の熱が下がりにくく、のぼせた状態になってしまいます。
また、全身的に緊張しやすく、足先まで熱が届きにくく冷えてしまいます。すると、お腹まで臍上が温かく、臍下が涼しいという頭寒足熱とは逆の状態になってしまいます。その結果として、赤ちゃんは上下を勘違いして頭を上にしてしまうのではないかと考えられます。
②腰やお腹の緊張による身動き取れない説
いわゆる「張り」は、腰やお腹周りの筋肉が緊張していることで生じます。張りがあると、赤ちゃんが自由に動ける範囲が狭くなってしまいます。
腰やお腹周りの緊張を緩めるように施術した後、お腹に触れてみると赤ちゃんの形が分かりやすくなります。胎動が活発になって、クルッと回ってくれることが多いです。
また、腰やお腹周りの緊張が取れると全身の血流まで良くなるので、ママの頭寒足熱も取り戻しやすくなります。
③内臓の冷えが関係している説
妊娠以前から内臓が冷えている場合もあれば、妊娠後に冷たい飲食物で内臓を冷やしてしまう場合もあります。
妊娠中は赤ちゃんのベッドである子宮内膜を厚くするために黄体ホルモンが分泌されます。このホルモンの影響により体温が平熱よりも0.3~0.5℃くらい高めになるので、妊娠前よりも暑く感じることが多くなります。また妊娠中は赤ちゃんを衝撃から守るため、皮下脂肪がつきやすくなります。これも暑く感じる理由の一つです。
何をするにも妊娠前よりエネルギー消費が増えるので、その分だけ熱をつくる量も増えて、その熱によって体が暑く感じやすくなります。
ですから、薄着になったり、冷たい食べ物や飲み物を好むようになって、知らず知らずのうちに、身体を冷やしてしまうのです。
身体や内臓が冷えると背中の筋肉が凝ります。すると、お腹までかたくなってきます。特に胃の辺りが硬くなると、赤ちゃんは頭を上にしたくなるようです。これは、柔らかい頭を守る本能によるものかもしれません。
3.なぜ逆子だと帝王切開になってしまうのか?
なぜ逆子が問題になるのでしょうか。それは出産時、赤ちゃんの頭が上にあると足から出なければならなくて、負担が大きくなるからです。その負担を避けるために帝王切開をします。
2001年に米国産婦人科学会(ACOG)は「正期産の骨盤位分娩(逆子のこと)では、経膣分娩を試みることなく予定帝王切開をするべきである」と勧告を出しました。これを受けて、日本でもほとんどの施設で帝王切開が選択されるようになりました。
帝王切開では麻酔をするので陣痛の苦しさはないといわれますが、お腹を切り開くため、産後は産まれたばかりの赤ちゃんのお世話をしながら傷の痛みを我慢しなければなりません。
4.帝王切開回避のために鍼灸師がお手伝いできること
鍼灸師が得意とすることは筋肉の緊張を緩和することです。手足や背中のツボに鍼やお灸の刺激を加えることによってお腹や腰や背中の筋肉の緊張を緩和することができます。
筋肉の緊張がとれることと同時に血流も良くなるので、体に本来の温かさが戻ってきます。張っていて冷たかったお腹が施術後にやわらかく、温かくなっていることが多いです。
また、首や肩のコリを取ると、頭の熱が下がってのぼせが軽くなります。
5.逆子と診断されたらママがやってはいけないこと
①使い捨てカイロをお腹に貼ること
「お腹が冷えているのだから使い捨てカイロを貼れば良いのではないか?」と人は思います。ですが使い捨てカイロは40度以上になります。もし、気温が40度あったらどうでしょう?苦しくて意識がもうろうとしてしまいますよね。
赤ちゃんは暑いと感じても逃げ場がありません。ママ自身も低温やけどをするかもしれないので、腹巻や腹帯などをするだけで十分です。
逆子体操をがんばりすぎること
実は、逆子体操の有効性は実証されていません。ですから、特におすすめはしていません。
もし、やることでお腹が張ってきたり腰に痛みが出たら中止してください。産科医や助産師も同じように言われると思います。逆子体操にこだわらず、身体が緊張しない体勢をみつけて、ゆったり過ごしてみてはいかがでしょうか。
それから産科医や助産師に、寝る向きをすすめられたとしても、体が苦しかったり、どこかが痛かったりしたら、がんばらないでください。苦しいことをしっかり伝えてください。
赤ちゃんも重力に影響は受けていますが、それだけで向きが決まるわけではありません。いろいろな影響を受けています。ママがいちばん寝やすく、ゆったりできる体勢で過ごすのが一番だと思いますよ。
6.逆子にならないためにママができること
①温かい飲み物を取る
飲み物は常温であっても冬場は体温より低くなるので体を冷やしてしまうことがあります。
頭寒足熱の観点からすると、冷たいものを飲んでもお腹の上の方にある胃が冷えるのだから問題なさそうに思います。でも、待ってください。
体は冷えた胃をそのままにしません。胃の温度を元通りにしようと熱が集まってきます。胃を冷やせば冷やすほど体は、胃を温めようとして熱がお腹の上の方に偏って、下の方が冷えてしまいます。
体温より高い飲み物や食べ物をとるように心がけた方が、頭寒足熱が保たれて逆子になりにくく、逆子が直りやすい環境であると言えます。
②ゆったり過ごす
十分な休息がとれていなかったり、とっているつもりでも疲労が蓄積しているママさんは多いです。もしかしたら、それで逆子が直りにくいのかもしれません。
ずっとがんばっていると、どこかしらに痛みがあることが当たり前になってしまいます。
鍼の施術のあとに「身体が軽くなった」「今まで痛みで我慢していたけど、痛みを感じないのは久しぶり」と言われることが少なくありません。
産休、育休は赤ちゃん中心の生活になります。体力的にも精神的にもママ自身が健康的に過ごすことができなければ、子育てが辛くなってしまいます。そうならないためにも、いまからママ自身の身体を大事にするきっかけにしてください。
提供:養気院