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症例を投稿した鍼灸院:音楽のための身体調整 しらべ

低音域が困難なチューバ奏者のアンブシュア不調

低音域が困難なチューバ奏者のアンブシュア不調

症状

いつからか定かではないが音の震えから徐々にアンブシュアが不安定になった。数年前に病院でフォーカル・ディストニアの一種である「アンブシュア・ディストニア疑い」と告げられる。一時期は吹こうとすると体が固まって動けなくなり舌で息がふさがるなどして完全に音が出せなくなった。来院時点では音は出るもののタンギングとアンブシュアが依然として不安定で、特に低音域がコントロール困難な状態だった。

  • 来院者

    男性

    40 代

  • 期間

    2019年9月 ~ 2020年5月

  • 通院回数

    6回

施術と経過

遠方からの来院だったことから月に1回程度の頻度で施術。毎回楽器を持参してもらい、演奏動作や音の変化を検証しながら進めている。
1回目 施術前に楽器を吹いてもらうと高音域からのスラーであれば低音域も鳴るが、初めから低音域の音を当てるのは困難だった。またスラーで下りた低音域に後からタンギングをつけるのも難しい状況だった。動作としてはブレス時に脊椎伸展、吹く時に頚椎屈曲していて、脊椎まわりの緊張がうかがわれた。首肩こりの自覚はないものの触れてみると首の左側が硬く張っていた。手のツボに鍼をするとこの緊張がゆるんだ。ブレスの動きがより柔軟になり、低音域のタンギングが少し改善した。
2回目 前回と同様の施術を繰り返す。
3回目 楽器を構える際に右腕が肋骨の動きを制約している様子が見えた。肋骨の動きが悪いと息の問題に直結する。肋骨と鎖骨・肩甲骨を分離して動きやすくする意図で手のツボに鍼をした。すると音が当たる率が向上しブレスも「楽に」なった。
4回目 前回と同様の施術を繰り返す。
5回目 タンギングの問題に関連して、舌の状態を確認するため下顎骨内側の筋肉をていねいに見たところ右側にコリを認めた。対応する手のツボを使ったところ、低音域でのタンギングが改善した。
6回目 前回と同じ手のツボに鍼をするとタンギング可能な低音域がさらに拡張した。またあらためて演奏動作を見て骨盤と大腿骨の関係性があまり変化しないことに気づいた。股関節に関係する脚のツボを使ったところ低音域の当たりが改善。胸椎の動きに関係する手のツボを加えるとさらに音量を上げても低音域が鳴るようになった。
現在も間隔を延ばしながら来院、施術している。

使用したツボ

ツボのアイコンからツボの詳細が見られます

まとめ

チューバのような大型楽器では体と楽器の関係性を変えないとアンブシュア周りの吹奏条件を変えるのは難しい。本例では脊椎と手足の連動を調整することでアンブシュアとマウスピースの接し方が調節できるようになり音の当たりが改善したと考える。

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