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顔面神経麻痺は「鎖骨」と「肩甲骨」を見る

顔面神経麻痺の一般的な見解

顔面神経麻痺とは、顔の筋肉が動かなくなってしまう病気です。口角が上がらず、水を飲むとこぼれてしまう。まぶたが閉じきれない、開ききらない。頬が重い、しびれる。食事が飲み込みづらい…など症状は多岐にわたります。

 

原因は単純ヘルペスウイルスや水痘帯状疱疹ウイルスによる感染と言われていますが、ハッキリとした原因は今も分かっていません。顔面神経麻痺の自然治癒率は50~70%だと言われています。楽観的に見れば2人に1人は放っておいても回復する…とも言えますが、自然治癒率を高める方法は分かっていません。

 

耳鼻科での診断がベル麻痺であってもラムゼイハント症候群であっても、早期に治療を開始した方が治癒率は高いと言われています。

 

 

鎖骨・肩甲骨と表情筋の関係

 

私たちは顔面神経麻痺の患者さんを施術する時、まず鎖骨肩甲骨の動きに注目します。

 

顔面神経麻痺に限らず、どこか身体の一部の動きが悪い場合、必ず対応して動きが悪くなっている部位があります。顔面神経麻痺で表情筋の動きが悪い場合、鎖骨と肩甲骨の動きが悪くなっているケースが多いのです。表情筋の動きと鎖骨・肩甲骨の動きは連動しているので、鎖骨と肩甲骨が動きやすくなると、表情筋の動きも回復します。

 

また骨の動きやすさは、そこに付着する筋肉の動きやすさによって決まります。顔面神経麻痺で特に重要なのが胸鎖乳突筋という頚の前側にある筋肉です。胸鎖乳突筋が硬くなると、付着している鎖骨の動きが悪くなります。

 

 

胸鎖乳突筋と表情筋の直接的な関係も見逃せません。試しに、口を「イー」の形にしていただくと、口だけでなく頚の筋肉も同時に動いているのがわかると思います。表情筋は単独で働いているのではなく、その周囲の筋肉の動きも重要なのです。

 

 

顔に鍼を打たず施術する理由

「自分で頚の筋肉をマッサージしていたら、顔の動きが少し良くなった」と言う話も聞きます。ただ、自分でマッサージする際には注意が必要です。筋肉には「過剰な刺激が加わると逆に硬くなる」という性質があるため、筋肉への直接的な刺激は慎重に行わなければいけません。

 

胸鎖乳突筋を緩めるツボはいくつかあり、合谷というツボが代表的です。

 

 

わざわざ患部から離れたツボに鍼をしなくても、頚に直接鍼を打てばその筋肉は緩みます。

それでも、患部から離れたツボに鍼をするメリットは少なくとも2つあります。

 

一つは、原因にアプローチできること。

例えば胸鎖乳突筋に直接、鍼をして緩んでも原因が他の場所に残っていれば、筋肉は再び硬くなってしまいます。

 

もう一つは、直接刺激によって起こるリスクをさけられること。

胸鎖乳突筋に鍼をする場合、鍼をした局所が緩みすぎたり、過剰な刺激でかえって硬くなることがあります。

 

顔面神経麻痺の患者さんの回復の過程を見ていると、最初は張りがなく下がっていた表情筋が持ち上がり、カステラのスポンジのようにふわふわとした弾力を帯びるようになります。

 

一刻も早く元の状態を取り戻せるよう、私たちは日々技術を磨き、施術の精度を高めています。